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フォトグラファーインタビューVol.10 ひろ・あおき

記録係にはなりたくない。画家に近い感覚で作品を生み出していく

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Photographer:ひろ・あおき

映像制作、イベントビジネスに携わっていた頃、業務の一環として写真撮影を行なっていたもののその後転職、物販の道を歩む。2011年約20年ぶりに写真家としての活動を再開。ショップ経営の傍ら撮影依頼、創作活動を続ける。

【略歴】
2012年春日井市落合公園管理棟1Fロビーにて写真展(個展)開催
2013年東京浅草にて写真展(グループ展)開催
2013年新宿伊勢丹にて作品展示販売
(Creema×伊勢丹 アートフレーム装飾 テーマ:晩夏)
2014年横浜本牧カナリアカフェ ひろ・あおき/山本史子二人展開催

 

ストリートフォトで培った、被写体に一歩入り込む技術

 

昔から「撮り歩き」と称して常々、街歩きをしていました。いわゆるストリートフォトですね。撮ってみたい被写体がいると、声をかけて撮らせてもらうんです。長年そうしたことをしていたので、人に声をかけることにはまったく抵抗を感じません。そんな下地もあり、『People in Srilanka』という作品を撮るために向かった異国の地スリランカでも、日本と同じスタンスで臨むことができました。もちろん言葉の壁などはありますが、性格的なものなのか、スリランカという土地やそこに住む人たちの中に入り込んでいくことは難しくありませんでした。

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 "People in Srilanka" SHOT JAPAN GALLERY

例えば、宝くじ売り場の女性の写真は、片言の現地語と英語で話しかけました。そして、冗談を交えてしばらく話したら「撮ってもいい?」という感じで撮る。これは、一歩入り込めた写真ですね。SHOT JAPANのギャラリー内の扉に使用している子どもの写真は、スリランカに着いたその日の写真です。何かいい被写体がいないかなと探していた時に、物珍しい日本人を見に電車の窓から身を乗り出している子どもを見つけました。この時はあえて大げさにカメラを「撮るよ」というジェスチャーをしたんです。そうしたら、隣の男の子が立ち上がったり、お母さんが笑ったりして、いい空気が作れた。どちらの写真もその人たちに入り込めたという意味で非常に気に入っています。

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 "People in Srilanka" SHOT JAPAN GALLERY

 

何気ない風景を切り取って、アートに変える

 

ほぼ毎日、新作写真をFacebookにアップしています。「art fragments」というこのシリーズは、今までのものとはまた違うスタンスで撮っています。ガレージや階段、ドアノブなど

街中の何の変哲もない所やモチーフの、ある一部を切り取ってアート作品に仕上げてしまうというアプローチです。「Red container」という作品は、その名の通り赤いコンテナが無造作に置かれている写真。これはお気に入りで自分の店のギャラリーにも張ってあります。「66W」というガレージの写真は、影の位置にこだわって撮り直した作品。「Yellow」は、歩道と車道の間の縁石を写したもの。どれも本当に何でもない場所にあるんだけれど、何だかアートっぽい。これがまさにこのシリーズの真骨頂なんだと思います。まだ完成形ではなく、追求している途中なのですが、ある程度カタチになったら作品展を開きたいと思っています。

 

絶対的な個性を出して、スタイルを確立したい

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"woman" SHOT JAPAN GALLERY

2011年に約20年ぶりに写真活動を再開し、プロ宣言しました。写真を撮る時、念頭に置いているのは、記念写真では意味がないという気持ち。だから、そこからもう一歩踏み込んだ写真を常に目指しています。

今後はスリランカのようなストリートフォトも続けていきますし、ポートレイトも続けていきます。それぞれ視点を変えて撮っていければと思っています。でも、正直に言うと、写真家として「これが、ひろ・あおきだ!」というようなスタイルはまだできていないんです。自然の写真も撮るし、ポートレイトや音楽ライブ、アーティスト写真も撮ります。目標は、自分で撮った作品のみを生業にすること。今、愛知で食器の店を経営しているのですが、その一角がギャラリーになっています。いずれは全面、写真のギャラリーにしたい。そのためには、絶対的な個性を出して、ひろ・あおきのスタイルを確立しなくてはいけません。“記録係”にはなりたくないんです。画家に近い感覚で、アートな作品を生み出していければと思っています。

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"woman" SHOT JAPAN GALLERY

抜群の世界観を持つフォトグラファーに注目

 

SHOT JAPANのギャラリーはよく見ています。いい写真を撮るなぁと思ったのは、宇賀地尚子さん。おとぎ話のような写真がすごく好きですね。何より、世界観が抜群です。自分の中に確固とした美しい世界観を持っていて、上手にそれを表現している。僕が撮るポートレイトの世界観も同じような感じです。例えば、女性の写真を撮る時に、どうしたらその人のいいところを引き出せるかなと考える。そして、自分が想像した世界観に被写体を当てはめる。そういった点が宇賀地さんの写真と似ている気がします。

 

 インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

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フォトグラファーインタビューVol.9 natsume

誰かの希望になれる写真を撮りたい

 鮮やかな空の写真をメインに撮影しているnatsumeさんは、32歳の若きフォトグラファーです。最近では、ナショナルジオグラフィックに2か月連続で掲載されるなど、その活躍が目覚ましいnatsumeさんに、写真を始めたきっかけや写真への熱い思いを伺いました。

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ポートレート撮影:花田和奈

 

Photographer:natsume

本名:小関 晃典(こせき あきのり) 1984年北海道生まれの東京育ち、日韓ハーフのフリーフォトグラファー。
早稲田大学在学時はスポーツ指導者を志すが、2008年の交通事故により断念。
リハビリ生活中に心奪われた空の美しさをきっかけに、風景写真を撮り始める。 独自の色彩感覚を活かした鮮やかな作風が特徴。 後遺症による足の痛みと闘いながら、アクティブかつポジティブに撮影を続けている。
仕事撮影ではウェディング、社長対談、スポーツなど幅広くこなす。ソニーイメージングプロサポート会員。

交通事故に遭い絶望の淵にいた僕を救ったのは、1冊の写真集だった


もともとは競技スポーツに関わる仕事を目指していました。大学もスポーツ科学部で、スポーツ指導者関係の就職先に就こうと思っていました。

人生が変わったのは、大学4年生の時。韓国に短期留学したいと思い、出発前の最終説明会を受けに行った日のことです。自転車で向かっている最中、タクシーに撥ねられちゃったんですね。足を大怪我して、もう走れないかもしれないと言われました。長い間、病院での入院生活が続きました。そこでは足を吊るされているので寝返りも打てないし、スモークガラスなので外はもちろん、空さえも見えない。相当ストレスが溜まりました。

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"DAY" SHOT JAPAN GALLERY

 しばらくして少し治ってきた頃に、無性に空の写真が見たくなって、リハビリがてら杖をつきながら書店に行きました。そこで出合ったのが、HABUさんの写真集です。空だけを撮っている写真家なんですが、けっこう衝撃でした。とにかく構図が自由なんですよね。よく見ると傾いていたり。「あ、この人、感覚で撮ってるな」って思いました。でも、どの空の写真もすごく雰囲気があって、素晴らしいんです。自分も撮りたい!と思いました。

HABUさんの写真は、教科書通りではない。その時、僕は完璧な人生を目指していたところがあって、それを交通事故で壊されてしまった。自暴自棄になっていたので、なおさら驚いたんですね。完璧でなくてもいいんだ。感性で人の心を動かせるんだ、と。そして、何の根拠があったかわかりませんが、僕にも撮れると思っちゃったんです(笑)。歩けるようになってきた頃、就職活動はせずに写真家になることを決めました。

 

自分の感覚を頼りに、道中で出合った偶然を撮る

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"WAY" SHOT JAPAN GALLERY

写真家になると言っても、それまで写真は全然撮っていなかったので、何の基礎も知識もありません。まずはガラケーの写メで空を撮り始めました。あとは、HABUさんが写真展のお手伝いをするアシスタントを募集していたので、それに応募しました。手伝っているうちにHABUさんとお会いする機会が多くなり、いつの間にか弟子に。ただ、HABUさんに技術を教わることは全然なくて、背中を見てついていく感じでした。とにかく空の写真を撮りまくって、自分の世界観を創り上げてきました。

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"SUNSET/SUNRISE" SHOT JAPAN GALLERY

写真を撮る時は、具体的にこういうものが撮りたいとイメージを持って撮りに行くスタイルではありません。撮影旅行へはどこか目的地を決めて、何を撮りに行くのかわからない状態で行き、道中で出合ったものを撮ります。

福島県のJR只見線・会津川口駅での写真もそのひとつです。吹雪の中、車掌さんが時計を見ている「Time to Go」という写真は、ナショナルジオグラフィックで”Best of February” に選出されました。これ、本当は朝日を撮ろうとしていた時のものなんです。でも、すごい吹雪で朝日を撮るのは到底無理で……。本当なら出かけないのですが、何かに出合えるかもしれないと思って、とりあえず行ってみました。駅でそろそろ出発する時間だと思って構えて待っていたら、車掌さんが出てきて、ぱっと時計を見た瞬間を反射で押した写真です。まさに勘と運ですね。

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"Natsume Works" natsumetic.com

最近の写真の中では、Facebookページのカバーにもしている、去年の6月に撮った海辺の写真が一番好きです。見渡す限りの空が鮮やかに染まる夕映えでした。女の子が走ってきた一瞬を後ろから撮りました。僕の場合、写真はフィーリングですね。ファインダーを見た時に、構図とかは一切考えない。色彩を重視して感覚で撮っています。

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"SUNSET/SUNRISE" SHOT JAPAN GALLERY

撮影旅行へ頻繁に行くことはなかなか難しいのですが、日課として自分のフェイスブックページに毎日空の写真を1日1枚上げています。これは、誰かの希望になってくれればという気持ちで続けているものです。僕がHABUさんの写真を見て前に進もうと思ったように、誰かが僕の写真を見てそう思ってくれたらいいなと思います。

 空はひとつにつながっている。世界中の空の写真を撮るのが夢


2年前から福島県を訪れて、現地の写真を撮っています。きっかけは、韓国の友達が福島にネガティブなイメージを持っていて、それを覆したいなと思って。一度、福島に行って撮ったことを話したら、「そんなところに行って大丈夫なの?」と言われてしまったんです。放射能のこととか真実はわからないけれど、自分が福島で見たものは事実として、こんな景色があるということを世界に発信していきたいです。

あとは、世界中の空の写真を撮りたいと思っています。4年前にHABUさんと一緒にオーストラリアへ撮影旅行に行った際、2週間だけ1人でいた時期がありました。その時に空を見て、「この空は日本とつながっているんだな」とふと気づいたんです。文化や宗教は違っても、人と人はひとつの空で繋がっているんだというメッセージを発信したいと思いました。いつか、世界中の空の写真を載せた写真集を出したい。そこにはもちろん、福島の空もたくさん入れて。これは長期的に考えている夢ですね。

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"DAY" SHOT JAPAN GALLERY

 誰にも真似できない、独特の撮り方に惹かれます

 

SHOT JAPANのギャラリー内では、宇賀地尚子さんの作品が気になりますね。おとぎ話のような世界観で、誰にも真似できない感じ。自分が同じ写真を撮って、全く同じレタッチをしても、このようにはなりません。

あとは、宮古島の写真を撮っているMiyakoIsland Photo Galleryさん。僕も宮古島に1ヶ月滞在したことがありますが、こんな景色見たことがありません。これ、よく見たら空撮なんですね。どうやって撮っているんだろうと気になりました。こういった新しいことをしている人の作品は好きですね。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

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フォトグラファーインタビューVol.8 木村芳文

天体写真のパイオニアが語る、写真との向き合い方

石川県在住の木村芳文さんは、霊峰・白山をライフワークとして撮るフォトグラファーです。自然風景と天体風景を組み合わせた独自の手法による作品は、圧倒的な世界観を醸し出しています。毎回、どのようにして素晴らしい作品を生み出しているのか、撮影に挑む姿勢やブレないマインドを伺いました。

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Photographer:木村芳文 1962年香川県生まれ

1988年 白山の撮影活動を開始。
2007年 写真家として独立。白山を生涯のテーマとして、高山帯の自然景観から山麓の生活・文化まで、写真表現を追求している。写真集は、『木村芳文写真集 白山自然態系』(北國新聞社)、他5冊。展覧会は、フジフォトサロン、石川県立歴史博物館、ミュゼふくおかカメラ館など。自然公園指導員

 

白山に魅了され、カメラを始めた

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 ”白山” SHOT JAPAN GALLERY

大学生の頃から山登りが趣味で、日本アルプスをほぼ踏破したり、沢登りをしに海外へ行ったりするなど、精力的に活動していました。石川県の白山に登ったのは、26歳の時。霊峰と言われている山ですが、実にいいところだなと、一気に魅了されました。自然とこの風景を残したいという思いが湧き上がって、写真を撮り始めるようになりました。28歳の頃です。

実はそれまで私は、どちらかというと写真を撮らない人だったんです。でも、白山に登って考えが一変しました。素晴らしい白山の景色を撮りたい。でも私に足りないものは写真を撮るカメラや技術だった。だから、撮りたいものを撮るためにはどう補っていけばいいかを考えました。

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 ”白山” SHOT JAPAN GALLERY

今、私が撮っている写真とはほとんど関係がないのですが、写真を撮り始めた当初は、丹地保堯さんという風景写真を撮る写真家に感化されました。この方が撮った木の写真は、とても惹かれるものがある。写真集をよく見て、どういうつもりでこれを撮ったのかなと考えて勉強しました。やはり写真は最終的にその人のマインドが出てくるものだと思いますね。

 

強い信念とイメージを持って、理想の写真を追求する

 

大自然の風景写真と天体写真を組み合わせた写真は、私が独自に生み出したものであり、パイオニアであると自負しています。写真家として始めた当初から、自然と天体が融合した写真を撮りたいという欲求がありました。やり始めた時から目標となる写真がなかったので、まさに0からのスタートでしたね。でも、実際に撮ってみたらなかなかうまくいかない。では、どうしたらいいかということで、色々研究をしました。

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 ”天と地と白山” SHOT JAPAN GALLERY

毎回、撮影は非常に複雑でシビアです。最近は望遠系のレンズで撮ることが多くなりましたが、地上風景に対して天体がどの位置に出てくるか、場所にしても数メートルの範囲で移動したり、分単位、秒単位で撮ったりしないといけません。そのため、自宅にいる時にすでに写真の完成イメージを固めます。それを撮るために、撮れる期間が1年間のうちに何回あるか、撮影可能な時間は何時何分か、場所はどこかと、完全に決める。問題はその時に気象条件が許すかと、自身がそこに行けるかということですが、綿密な年間計画を立てて、チャンスがあればきちっとそれを遂行します。撮影自体はそっけないものですが、常に「とにかくこれが撮りたいんだ」という強い信念とイメージを持って、そのために何をしなければいけないかを突き詰めています。

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 ”天と地と白山” SHOT JAPAN GALLERY

批判や意見も聞き入れ、糧にする

 

今ある機材でベストな写真を撮ること、あるいはそれを超えたところに挑戦していくこと、それが私が考える「プロ」の姿です。そういった意味で、新しい手法を常に追求していますが、一方で人の意見をとても参考にしています。最近はSNSに天体写真をあげると、非難ごうごうくるんですよ(笑)。でもそういった声は非常にありがたい。天体を突き詰めた方にとって、私の写真はどう見えるのか。本音や忌憚ない意見を言っていただき、それらを糧にします。写真は芸術表現ですから、どんな表現でも自由だと思います。でも、やはり私が求めるのは自然として妥当性があるもの。誰も文句のつけようがない美しい写真を目指したいのです。

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最近は、天体写真についてのセミナー講師をしています。3月26日、27日にも銀座のEIZOショールームで、星空と地上風景を別撮りしてワンショットに合成する「新星景写真」についてお話します。ぜひ、天体が趣味の方にも来てもらいたいですね。

”デジタルフォト・ワンストップセミナー「新星景写真」”

写真というのは、皆が同じように撮れるようになれば造詣も深くなるし、より的確な評価が得られて、非常にいい作品が世の中に生まれていくと思うんです。だから、技術は共有したほうがいいし、他の人にも私と同じように撮れるようになってほしい。そして、私を追随するようなフォトグラファーが現れてほしいですね。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

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フォトグラファーインタビューVol.7 小野寺宏友 (後編)

写真を撮ることしかできないから、ロックな生き方をする

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ジオラマ、パノラマ、深夜撮影を得意とし、長いキャリアを積まれてきた小野寺宏友さん。前編では、30年のキャリアをさかのぼるとともに、話題作「シンヤノハイカイ」の秘話や、『アサヒカメラ』で特集された野良桜についてお話いただきました。後編では、代表作であるスカイツリーの定点観測写真のお話を中心に、小野寺さんのユニークな生き方を伺いました。

 →前編はこちら

Photographer:小野寺宏友 1960年東京生まれ

”王道を歩まないフォトグラファー”

1982年 武蔵野美術短期大学商業デザイン科卒業
    同年模型雑誌で特撮デビュー
1986年 フリーとして独立
2003年 ライフワーク“シンヤノハイカイ”シリーズ撮影開始
2007年 東京スカイツリー(R)定点観測開始 TV出演多数
2012年 東京スカイツリー(R)公認写真集『東京634』(ソフトバンククリエイティブ)出版
2013年 ”野良桜”の概念を発見し撮影開始

 

 

”テクノスケープ”として美しい東京の川を来世紀へと伝える

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 ”彫刻水路都市” SHOT JAPAN GALLERY

真夜中の東京をさまよいながら撮影した「シンヤノハイカイ」から派生して、2004年から東京の水路を撮り始めました。一本の川の、そこにかかるすべての橋の上から水路を撮影しました。ある時、暗渠化した渋谷川の存在を知ったんですね。渋谷駅前からは開渠になり、広尾・麻布十番・芝公園脇を通り、東京湾へ流れ込んでいる小さな川。ここに最初に流れていた小さな水が、実は海まで続いているんだと知ったとき、都市河川のすさまじい生命力に気づいてしまったんです。死んでいるようで、ちゃんと生きている。

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”彫刻水路都市” SHOT JAPAN GALLERY

当時、畠山直哉さんが天国の入り口みたいに見えるとても美しい渋谷川の暗渠の中の写真を撮って、賞を受賞していました。あれには勝てない。じゃあ僕ならどうするか。すべての写真を、橋の上流側と下流側を完全に真ん中から水平垂直に撮る構図にしたんですね。そして河口まで撮影、それらの写真を蛇腹状につなげていきました。2005年に大手町で展示した日本橋川にかかる橋からの写真は全長18メートルにおよび、それらを離れて見ると1本の川のポートレイトとなりました。

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”彫刻水路都市” SHOT JAPAN GALLERY

作品のタイトルは、僕が好きなドイツの写真家ベッヒャー夫妻の「無名の彫刻」という概念からヒントを得ました。川は、大地が掘った地形に流れている。都市河川は、人が固めた護岸を流れる。それはいわば、大地と人とのコラボレーションであり、「無名の彫刻」でもある。直線で固められた人工的な川は、不幸だけれども”テクノスケープ”としての美しさを放っていると感じたんです。だから「彫刻水路都市」と名付けました。都市は川の周囲に人が集まってきて、治水が進んで、コンクリートの護岸になった。そんな時の流れを感じるようなものにしました。この作品を何十年か後に見た人たちが、「21世紀初頭の東京の川ってこんな風だったんだ」と言ってもらえるようなアーカイブになればいいなと思います。

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100年先へのアーカイブとして撮影したスカイツリー

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”Tokyo Skytree” SHOT JAPAN GALLERY

僕の代表作ともいえる写真集『東京634』(ソフトバンククリエイティブ2012年)は、東京スカイツリーの着工から完成までを定点観測で撮影した作品です。

さかのぼること9年前、2007年10月に地元の有志によって4本のサーチライトでのシミュレーションイベント、「光タワー」が作られました。この光タワーから新タワーの完成までを撮ったらおもしろいんじゃないかなと思ったのが、定点観測撮影のきっかけです。それと、パリのエッフェル塔が建ったのが120年前も前になりますが、建設されていく様子を定点観測した写真が今も鮮明に残っていて伝わっていますよね。同じように光タワーから定点観測した写真を撮れば、僕の写真も100年先まで伝えられるんじゃないかと思ったんです。そういった100年先へのアーカイブという意味も込めて撮影を始めました。

2008年7月の着工からスタートし、2012年5月の開業まで1ヶ月に1回、毎月撮影を行いました。メインの撮影では4×5の銀塩カメラを使い、フィルムとデジタルを併用しました。最初、デジタルが銀塩かで考えていたんですが、当時の一眼レフデジカメの最高画質は2000万画素程度で、ふと疑問が浮かんだんです。フィルムというのはいずれ消えていくメディアだとはわかっていましたが、2000万画素のデジカメで撮ったクオリティではアーカイブとして100年後にはどう見られるんだろう?と。だったら、自分が持っている大判機材とフィルムを使って記録したほうがいいんじゃないか。もちろん、フィルムが100年後に退色しているかもしれません。ただ、そうした場合も100年先のテクノロジーで色を復元することは可能ですよね。ということで、あえてフィルムを選びました。

スカイツリーが開業した2012年、銀座のコダックフォトサロンで個展を開きました。そこでは、春夏秋冬同じ場所にパノラマカメラを構えて、春は朝、夏は昼、秋は夕方、冬は夜というふうに1年の変化を1日の変化と融合させた360度のパノラマを4年分シームレスに1本につなげている作品もあります。

Tokyo Skytree 2008-2012

”Tokyo Skytree” SHOT JAPAN GALLERY

スカイツリーの定点観測は、誰にも頼まれていないのに自分1人で勝手に撮り始めました。地元の方々向けの定点観測講座なども行いました。そうしたらだんだん色々な取材を受けるようになって、写真集も出せるようになった。でも実は、何でスカイツリーを定点観測したいのか、最初は自分でもわからなかったんです。もちろんエッフェル塔がモデルになったというのはあるんですが、なぜ撮るのだろう、定点観測のコンセプトは何だろう、とモヤモヤしていた。そこで、カフェにこもって考えたんです。通称「オレ1人会議」(笑)。そこでは、ウルトラマンとかサンダーバードとかプラモデルとか、子どもの頃から好きだったものをキーワードでわーっとノートに書いていきました。書き出しているうちにふと、バージニア・リー・バートンさんの「ちいさいおうち」という絵本が大好きだったのを思い出したんです。ちいさいおうちを中心に話が展開し、ちいさいおうちの周りが変化してだんだん街になっていくお話。あ、これだ!と。僕は「ちいさいおうち」をインプリンティングされていって、それでスカイツリーの定点観測をするようになったんだ、と。こんな風に僕の作品はどれもきちんと芯を持っていて、その芯がいつもどこにあるか考えて写真を撮っています。

 

過去は振り返らずに、未来しか見ない

 

こうしてみると、本当に変なことばっかりやっているなと自分でも思いますね。最初にも言ったように、僕は王道を歩みません。常に自己流の表現をしているので、あまり作品も売れないし、いつだって貧乏です(笑)。それでも他の仕事は考えられないし、僕は写真を撮ることしかできないんです。あの頃に戻りたいとか全く思わないし、いつの時代も最低なので過去なんか振り返りません。未来しか見ずに、これからもロックな生き方を続けるつもりです。

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表現の可能性を広げるため、写真に限らず普段からいろいろな人の作品を見るようにしています。SHOT JAPANのギャラリーでは、藤原明さんが気になりました。高校卒業後にスペインへ留学し、26歳で本格的に写真を始めたとのこと。彼のプロフィールにある「写真は現実を写さない。カメラと言う媒体で新しい世界を創造するものである。もしかして現実よりもっと美しいかもしれない。」という言葉が好きです。志がいいですよね。今後どういう作品を出していくのか、彼のオリジナルの世界がどんなものなのか気になります。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

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フォトグラファーインタビューVol.7 小野寺宏友 (前編)

王道は歩まない。常に自己流で表現する

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ジオラマ、パノラマ、深夜撮影を得意とし、長いキャリアを積まれてきた小野寺宏友さん。近年では、東京スカイツリーの定点観測写真で数々のメディアに取り上げられました。また、今年の2月20日発売の『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の特集グラビアで紹介され、その独特の写真が大きな話題を呼んでいます。今回は、前編・後編と2回にわたり、小野寺さんのキャリアや写真に対する思いを余すことなくお伝えします。

 

Photographer:小野寺宏友 1960年東京生まれ

”王道を歩まないフォトグラファー”

1982年 武蔵野美術短期大学商業デザイン科卒業
    同年模型雑誌で特撮デビュー
1986年 フリーとして独立
2003年 ライフワーク“シンヤノハイカイ”シリーズ撮影開始
2007年 東京スカイツリー(R)定点観測開始 TV出演多数
2012年 東京スカイツリー(R)公認写真集『東京634』(ソフトバンククリエイティブ)出版
2013年 ”野良桜”の概念を発見し撮影開始

 

ジオラマから映像制作まで、カメラに携わること30

 

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僕は基本的に王道を歩みません。例えば、アーティストや女性アイドルをきれいに撮るとか、高級時計をシズル感をだして撮るとか、そういうことはまったくできない。21歳から特撮の仕事を始めて、25歳で独立、今年で独立30周年になります。写真の学校なども行かず、全部自己流でやってきました。代表的な仕事としては、リカちゃん人形のパッケージ写真をかれこれ25年ほど、『こどもちゃれんじ』の表紙は20年ほど撮り続けていました。ジオラマ撮影をするのが得意なんですよね。

高校生の時に、映画『2001年宇宙の旅』を見て衝撃を受け、そこから映像の世界にのめりこみました。美大に入ってから8ミリフィルムで『2001年』を再現し、卒業後はCMの制作プロダクションに入りました。そこは結局3ヶ月で辞めてしまったのですが、その後、先輩が働いていた模型専門誌『ホビージャパン』から声がかかり、特撮の仕事を手伝うことになりました。その時の僕のオリジナルの撮り方がけっこう評判になったことから、フリーで本格的にジオラマ撮影を始めることになりました。徐々に仕事の依頼が増え、ジオラマ写真の撮影のほかにも、子ども向けビデオ教材の脚本、監督など映像の仕事も精力的に行っていましたが、仕事をやり過ぎて押しつぶされ、入院。その後何もできなくなってしまいました。

 

自分自身を投影した「シンヤノハイカイ」

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転機が訪れたのは2002年の暮れのこと。それまでは、仕事以外でプライベートではカメラは持たないと決めていました。でも、ある時、友人からロシア製のトイカメラの存在を知ります。すぐにLOMOカメラ※1を購入して撮ってみたら、これは楽しい!と。一気にのめり込みましたね。毎月1台、ロシアカメラを買っていたりしました。(笑)

※1ロモとは、ロシアの光学機器メーカー、レニングラード光学器械合同(Leningrad Optical Mechanical Amalgamation)の略称である。日本ではカメラ製品、とくにLC-Aを初めとする、いわゆるトイカメラを製造していたブランドとして知られている。Wikipediaより引用

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 ”シンヤノハイカイ” SHOT JAPAN GALLERY

そんなある日、銀座の中古カメラ屋で旧東ドイツのペンタコン6というカメラを買って、深夜撮影のスイッチが入りました。ある時は一晩で24枚撮りの中判フィルムを10本通したこともあります。ペンタコン6では、最初は身近な深夜の情景を撮っていました。でもある時、何気なく目にした、東京のど真ん中にぽつんとある”児童公園の滑り台”を撮影したんですね。それを機に、夜中に雪に埋もれている小さなユンボとか、ライトが消えているお台場の観覧車とかを撮るようになった。こういったものを撮って並べた時に、「なんで俺こんなの撮っちゃうのかな」と思ったんです。それで、いろいろ考えて出た答えは、「明日誰かの役に立つのを待っているモノ」をポートレートとして撮っていた、ということです。公園の遊具も雪に埋もれたユンボも、営業を終えた観覧車も、明日になれば誰か必要な人が来て、楽しんでくれるのを待っている。働くのを待っている。だから、写真1枚1枚に未来が生まれている。そう考えると、それぞれの表情が見えてくるようになりました。

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”シンヤノハイカイ” SHOT JAPAN GALLERY

この一連の写真につけたタイトルは「シンヤノハイカイ」。全部カタカナにした意味は、理由もわからずさまよい、そしてその目的にたどり着いた、その過程を表しています。それぞれの写真が自分自身の投影であり、明日のために深夜に息をひそめて存在していると思ったから。写真を撮っているうちに、何だかよくわからないけど自分自身を撮っていたんですね。

 

「野良桜」の魅力を全国に広めたい

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今回、『アサヒカメラ』2016年3月号の特集グラビアに、4人の写真家の1人として紹介されました。五島健司さん、深澤武さん、鈴木理策さんというそうそうたる方々の中で、僕の作品は「野良桜」と、明らかにテイストが違います。僕にとって上野公園とか有名な花見スポットの桜は、AKBのような集団アイドル。でも、街角に佇んでいる桜は地元のアイドルみたいな存在。それをポートレートとして撮ります。なるべく枝ぶりのきれいなもの、スタンドアローンで立っているもので、何でこんなところに咲いているんだろう?って思うような場所にいるものがいいですね。撮影を深夜に限定しているのは、基本的にヒトが苦手なのと、野良桜のポートレートなのでヒトが起きている空気感を写したくないのです。あとは、深夜の街は光が均一なので遠くのほうまでクリアに写るから。だから映画のセットみたいにも撮れるんです。

 

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”東京野良桜” SHOT JAPAN GALLERY

今は、「野良桜」を広めるべく、「東京野良桜」というTwitterのアカウントをつくって、ハッシュタグ野良桜で全国から野良桜写真の投稿を募集するという取り組みをしています。僕の写真を見てくれた人が、街中に佇む桜のことを見直して「野良桜」を身近に感じてくれたらいいなと。さらに「野良桜」を1つのジャンルとしてつくって、そこからサブカル的な部分を発展普及させていければいいなと思っています。

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 →後編へ続く

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

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フォトグラファーインタビューVol.6 ケースケ・ウッティー

自分が撮った写真で、何かを動かしたい

 オランウータンをはじめとする野生動物の写真を撮影しているケースケ・ウッティーさん。

各国で出合った動物達と、そこに直面している問題を、独自の視点で表現しています。ウッティーさんが写真を通して伝えたいこととは何か。現地でのエピソードとともに語っていただきました。

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Photographer:ケースケ・ウッティー 1977年生まれ

日本自然科学写真協会 会員
自然環境問題に関心があり、特に人為的絶滅に追いやられる動物について何かできないかと思っている。撮影対象は身近な自然から秘境まで。

略歴
・1998年 日本動植環境カレッジ 自然環境保護学科 卒業
・東京都葛西臨海水族園 準職員(アルバイト)
・2001年 日本写真芸術専門学校 写真芸術科 卒業

写真展歴
・2008年 オリンパスギャラリー東京にて写真展 タマナショナル〜オランウータンとこの森の関係〜 開催
・2010年 恵比寿 アップステアーズギャラリーにて写真展 6・23 光と影の沖縄 開催
・2013年 1月 オリンパスギャラリー東京、6月大阪にて写真展 ゴリラボヤージャー 2011 〜東から西へ〜 (東のゴリラ編 ) 開催
・2015年11月 オリンパスギャラリー東京にて写真展 イエネコの野生 開催
以上

 

 

オランウータンの現状、そして森へ帰すプロジェクトを取材するため、インドネシアへ

 

2008年にオランウータンと森の関係を伝えるため写真展を開催しました。舞台は、ボルネオ島インドネシア領(カリマンタン)、タンジュンプティン国立公園。ジャングルに約1ヶ月間滞在し、オランウータンとプロジェクトの森を撮影しました。

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”インドネシア オランウータンの棲む森” SHOT JAPAN GALLERY

オランウータンを絶滅へ追いやる要因は、生息地の減少とペットとしての密漁などです。生息地の減少とは、ジャングルを開発することです。また、ペットとして需要のある子供が捕獲されるとき、一緒にいる母親は殺されます。子供は母親に寄り添い約8年間、生きるすべを学んでから自立するのです。8歳未満の子供は自然界で自活できません。

オランウータンを森へ帰すプロジェクトとは、ペットとして密猟された個体や、病気など、様々な理由で保護されたオランウータン達をリハビリし、再び森へ帰すというプロジェクトです。森へ帰されたオランウータン達は、生活に必要な食べ物を全てまかなうことが出来ないため、1日に2回ほど食べ物をもらいに集まってきます。写真のほとんどはその場所で撮影しました。本来、野生のオランウータンは木の上の方にいて、地上近くで見ることは稀です。また、人を恐れて隠れてしまうので探すのも大変なのです。そのため、野生のオランウータンと出会ったのは滞在中2回ほどですね。

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そもそも取材に行ったきっかけは、2002年に「あと10年したら野生のオランウータンは見られなくなる」という報道を見たから。もともと動物が大好きで、自然保護関係の仕事に就きたかったこともあり、すぐに翌年に現地へ行きました。実際、今でも野生のオランウータンを見られる場所はありますが、絶滅の危機に瀕しているのには変わりありません。実は、オランウータンの絶滅には、私たち日本人も少なからず関係しているのです。私たちが輸入しているパーム油や木材は、オランウータンの住んでいる森を壊して生産されていたりします。写真を通して、オランウータンと森について考えてもらうきっかけになればと思い、写真展を開催しました。

 

人の心に一番伝わるのは、プリントの写真

 

2011年には、アフリカ中央部東側から西側へ、3か国の野生ゴリラを訪ねる旅を企画・実行しました。ゴリラはとても繊細で、人間に生活を覗き込まれることにストレスを感じます。ですから、顔見知りでない大人数の人間に囲まれると移動を開始してしまいますので、撮影は非常に苦労しました。毎日、三脚と重い機材を持って、現地のレンジャーと一緒にゴリラを求めて森の中を歩き回りました。ゴリラと対面しても彼らは背を向けてしまうこともあるため、シャッターチャンスは限られています。しかも、ストレスを与えないように、ゴリラに出合っても1時間以内に離れないといけません。そんな中、とっておきのショットが撮れたのが、コンゴ民主共和国でのヒガシローランドゴリラの写真です。コンゴ民主共和国へは、ルワンダから陸路で入りましたが、北キブ州、南キブ州、共に外務省が退避勧告を出している地域なのです。ヒガシローランドゴリラの居る地域を訪れる観光客はほとんどいません。ですから、僕とレンジャーとで3名で行動できたということもあり、自然な表情をとらえることが出来ました。

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”コンゴ” SHOT JAPAN GALLERY

この旅の目的は、野生ゴリラの写真を撮って写真展を開くこと、と最初から決めていました。しかし、ゴリラはとても繊細な生き物です。1回のトレッキングでゴリラと一緒にいられる時間は60分。そのほか、国際的に取り決められた数々の制約をクリアしないとなりませんでした。

1回のゴリラトレッキングに参加できる人数は7〜8人。そのため、ゴリラと会うことが出来る人数は年間で限られます。ゴリラと7メートルの距離を保たねばなりません。ただし、ゴリラが近づいてきた場合は除く、などの制約があります。各国で5回のトレッキングに参加しましたので、2カ国で計10時間の制約の中で写真を組み立てることを頭に入れながら撮影に臨みました。その間、ゴリラたちは止まってくれません・・・・。ジャングルは暗いですし、三脚をセットして、いざカメラを構えるとゴリラたちが移動してしまうこともしばしば。撮影にはとても苦労しました。2013年にオリンパスギャラリー東京・大阪で、写真展として何とかカタチにすることが出来ましたが、計50点の写真を精査するのは大変でした。

やはり、人の心に一番伝わるのは写真展だと思います。雑誌やWebとかじゃなくて、プリントが一番伝わるんですよね。自分が撮影したオランウータンやゴリラの写真を通して、何か感じてもらえたら・・また、何かを動かすきっかけになればいいと思っています。

 

人為的に絶滅に追いやられる野生動物の事を知らせたい

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オランウータンの取材は、自分が写真家としてスタートする初陣にあたります。一番最初に撮影対象として選んだ被写体が類人猿であることから、次はゴリラ、チンパンジー、ボノボと追っていこうと決めていました。1回の取材と写真展を合わせると車一台を新車で買うほどの資金が必要で、次の撮影は未定になっています。

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SHOT JAPANのギャラリー内にも、動物の写真がたくさんありますね。中でも、イルカの写真を撮られている高縄さんの作品は目を引きました。僕自身、水族館でアルバイトをしたこともあり、海中の環境にも興味があります。陸と海が繋がっていますし、それらが複雑に絡み合って生き物が存在していますから・・・。ただ、水中は特殊な技術も必要ですし、簡単には踏み込めない領域ですね。地球上の圧倒的な大自然て、そこにあるだけで多くの人が注目しますが、ごく身近な自然だって、たくさんの不思議や感動があります。また、身近な自然を大切にする気持ちこそが、大きな自然を護ることに繋がると思っていますので、それを写真で伝えるためにアンテナを張り巡らせています。

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インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

【ウッティーさんよりお知らせ】

2016/3/29(火)~4/2(土)

二人展「カフェ・ゴリラ」(ケースケ・ウッティー×家鴨窯)

@カフェ・ジャローナ(港区赤坂2-6-22 B-102 地下1階・赤坂駅徒歩2分)
写真家ケースケ・ウッティーさんの野生ゴリラ写真 × 作陶家 家鴨窯さんの陶ゴリラで、カフェ・ジャローナさんが「カフェ・ゴリラ」になります!

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フォトグラファーインタビューVol.5 アサカタカフミ

その時にしか見られないものを撮っていきたい

 ワイルドで悪そうなネコ、どこか寂し気な表情のネコ――。アサカタカフミさんが撮る写真は、ネコへの愛で溢れています。街で出合ったさまざまなネコや、本業である映像ディレクターについてお話を伺いました。

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Photographer:アサカタカフミ 1978年生まれ

写真と音楽とネコを愛する映像ディレクター

2005 第4回 ポケットアート展(Gallery MADO)、黒猫展(猫の額 w/黒猫ポヲ)、ヨスガラユウギ館(ニヒル牛2 w/黒猫ポヲ) / 2006 第5回 ポケットアート展(Gallery MADO) / 2007 第6回 ポケットアート展(Gallery MADO) /2008 猫俳句(世界文化社) / 2012 個展 悪そうなヤツら(Gallery MADO) / 2015 グループ展 官能の情景(72Gallery)

 

映像ディレクションをメインに、写真もこなすマルチプレーヤー

現在は、映像ディレクターとシネマトグラファー、そしてフォトグラファーと、3足のわらじを履きながら活動しています。

もともと、中学生のころから映像に興味を持っていましたが、学生時代はビデオカメラが高価だったので、その代わりにフィルムカメラを持ち始めました。紆余曲折ありながら、今は映像の仕事をメインに、その傍らで写真を撮っています。映像ディレクターというのは、現場で映像をディレクションし、撮影・編集まで行う人。シネマトグラファーはビデオグラファーとも言われていて、ビデオカメラで映画のような映像を撮る人を指します。最近では、NPO法人グッド・エイジング・エールズとレスリー・キーさんがLGBTの人たちを撮影するプロジェクト「OUT IN JAPAN」のメイキングムービーを制作しました。

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ネコを撮ることで始まるコミュニケーション

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”悪そうなヤツら” SHOT JAPAN GALLERY

写真は、ネコやライブ風景を撮ることが多いです。基本的にネコは野良。新宿の繁華街や東京の下町、神奈川の海岸などに行き、そこで出合ったネコを気ままに撮っています。特に新宿は10年くらい前から知っているネコもいたりして、付き合いは長いですね。新宿の街をブラブラしていると、いろいろな職業の人たちに出会えて知り合いになれるんです。あの場所では、ネコを撮ることがコミュニケーションのきっかけになっています。

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僕自身、どちらかというと人と話すのが苦手なので、ネコのほうが気兼ねなく撮れます。独学で写真を始めたので、例えば人物を撮る時に、きれいに映る角度がどこかを見てモデルに指示するというようなことが苦手で……。ネコやライブみたいなドキュメンタリーをその場の雰囲気で捉えるほうが撮りやすいですね。ネコなんかは、ひたすら向こうの動きを追いかけるのみ。構図など難しく考えずに、ノーファインダーでフィーリングで撮っています。

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”悪そうなヤツら” SHOT JAPAN GALLERY

今後は、苦手としていた人物写真を撮ってみたいなと思っています。ライブでもポートレイトっぽいものとかにしてみたり。あとは、2012年に悪そうなネコの写真を30点ほど集めたネコ写真の個展を開いたのですが、今年あたりまたやりたいです。

 

時間の経過や空気感を伝えたい

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SHOT JAPANのギャラリー内でも、ネコの写真は多いですよね。犬の場合、自分が飼っている犬が好きという人が多いけれど、ネコは誰のネコだろうとネコが好きという人が多い。僕はフィーリングでネコを撮っていますが、同じようにネコを撮られている方に、どんな感じで撮っているか聞いてみたいです。

あとは、ギャラリー内では少ないですが、廃れた場所や物の写真は好きですね。ちょうど今、事務所の近くにある国立競技場が更地になっているのですが、そういった何もなくなってしまった場所とか、時間の移り変わりを意識するような建物とかに惹かれます。廃墟とはちょっと異なりますが、2011年の東日本大震災の後、宮城県の気仙沼周辺を撮影しに行きました。海岸線沿いから湾外に抜けてく道を進むごとに津波の凄まじさを実感し、見渡す限り破壊されている光景に言葉をなくしました。そこに在るはずのものが無くなっていて、無いはずのものが在る。興味関心なのか、何か強く惹かれるものがあり、無意識のうちに撮っていました。この場所の時間経過とか、空気感を伝えたい。なぜ今これを撮るのか、撮る意義を考えつつ、その時じゃなきゃ見られないものを撮っていきたいです。

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 ”負はひっくり返しても負のまま” SHOT JAPAN GALLERY

また、女性カメラマンの視点にも興味があります。ギャラリー内の作品でいうと、野生イルカを撮っている高縄奈々さんの写真は、単純にすごいなと思います。カメラの構図というよりはインパクトがすごい。こういう写真撮るんだ、という驚きがあります。あとは、料理と枯葉の写真をあげているAki(Aki Saito)さん。女性って、もっと青々してキラキラした写真を撮る人が多いのに、葉っぱを退廃的に撮っている。廃墟のイメージに近いですよね。一方で、料理写真は明るく新鮮なものという、その対比がおもしろいなと思います。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

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フォトグラファーインタビューVol.4 橋本タカキ

写真はリズム。向き合えば自然と見えてくるものがある

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アートヌードや風景、ポートレートなど幅広いジャンルにおいて生命感溢れる作品を生み出している橋本タカキさん。自身の写真に対する思いや今後の展望などを伺いました。

 

Photographer:橋本タカキ

1971年生まれ
ファッション、アートヌード、ネイチャー、風景、コマーシャル、スナップなど活動は多岐にわたり、一貫して生命感溢れる作風を特徴としている。日本写真協会会員。
<主な賞歴>
2006年 第34回 APA公募展 (第34回 社団法人日本広告写真家協会公募展)公共広告部門奨励賞
2009年 SONY WORLD PHOTO AWARDS 2009 コマーシャルカテゴリーファッション部門3rd Place
<個展>
2005年「WAVE〜なみのいろなみのおと〜」コニカミノルタプラザ
2008年「Shangri-La」ある楽園の情景、その中での彷徨い コニカミノルタプラザ

 

「言葉」を意識して写真を撮る

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僕はアートとは隠喩であり、写真はリズムだと思うんです。写真は音が聞こえないし匂いもない。でも、写真と向き合えば自然とそういったものが見えてきます。

馬をテーマにした「Season of the Wind」では、馬の疾走感を表現しながらも一方で静的な一面を見せています。今にもいななきが聞こえてきそうな場面では、同時に風が吹く音や空気の温度を感じさせます。一枚の写真上で様々なリズムを表現しているのです。

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”Season of the wind” SHOT JAPAN GALLERY

また、写真を撮り始めた当初から「言葉」というものを意識していました。よく、「言葉にできないことを写真にしている」という人がいるけれど、僕は違うと思う。言葉にできないことは写真には表せません。写真は自分が見たとおりにしか映らないですから。要は「どう見るか」。僕は自分が思ったことを言葉にして、写真というカタチでファンや顧客に伝えていっています。

 

作品の普遍的テーマは「命」

 

SHOT JAPANのギャラリー内にある花々の表情を集めた「MIYABI」は、現世を表現した作品です。草花は激しく動かないけれど、季節によって静かに変化していきます。花もポートレートと同じで、こちらから心を開いて向き合えば、ちゃんとその姿を変えてくれます。あえて全て黒バックにすることで、風になびく葉っぱのざわめきや花の息づかいなどといったリズムを生み出しているのです。だから「MIYABI」は、季節をうたった短歌を詠むように楽しんでほしいですね。

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 ”Season of the wind” SHOT JAPAN GALLERY

僕の作品の普遍的なテーマは「命」。海のシリーズ「Wave」は、濡れたところは彼岸で、乾いたところは此岸という境界線を表しています。

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「Shangri-La」は“向こう側”を意味します。僕は今まで様々な色を見てきたし知っています。だけど“向こう側”は現世の色で表せないから、色の情報を全部抜きました。モノクロにすることで、その写真は見る人によって様々な色を想起させます。各自が追体験していきながら、自分の鏡のように写真と向き合ってもらいたいなと思っています。

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リビングに置いてずっと向き合っていられる写真を撮りたい

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今後についてはいろいろと構想はありますが、やはりコンテンポラリーアートとして写真を捉え、今までなかった目線でやっていきたいですね。何だかよくわからないけど、見れば見るほどおもしろい、そんなコンセプチュアルなものを表現できればと思っています。

写真って、シャッターを切ったら終わりじゃなくて、シャッターを切るまでの間に制作時間があるんだと思うんです。何をどう見て、どう感じて、どう撮るか……。思いの強さだけではいい写真はできないけれど、どれだけ思考を積み重ねてきたかが大事だと考えます。ぱっと見た目は派手だけど、よく見ると5秒も見てられない写真って多かったりしますよね。リビングにおいて1時間でも2時間でも向き合っていたいと思えるものでなきゃ。だから僕は自分の写真を実験的に飾るし、部屋の中にずっと置いておきます。飽きる写真なんてそんなのだめ。頭から離れない、地味だけど気になってしかたない、そんな写真をつくりたいと思っています。

 

ストーリーやリズムを感じる作品に注目

 

SHOT JAPANのギャラリーはよく見ます。やはり、コンセプトがしっかりまとまっている人の作品は注目しますね。リズムよく写真が展開されていたり、見せ方を考えている写真は自然と引き込まれます。

そういった意味も含め、友人のケースケ・ウッティーさんの写真は好きです。オランウータンやネコの写真を撮っているんだけど、彼の独特の目線で見る写真がすごくいいですね。

あとは、Aki(Aki Saito)さん「枯葉」はおもしろいですね。仕上げとか見せ方ですごく化ける可能性を秘めている。欲を言えば、アップだけじゃなくて葉っぱ全体のスタイリングや表情を見てみたいと思いました。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ケイタ

 

 

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フォトグラファーインタビューVol.3 福井智一

作品を通して野生動物の今を伝える

 

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 2014年に写真展「ケニア・生命の大地」を開催した福井智一さん。東アフリカ・ケニアで撮影した野生動物の生き生きとした写真は大きな反響を呼びました。福井さんが写真を通して伝えたいことは何か。その熱い思いを伺いました。

 

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Photographer:福井智一(写真右側)

野生動物写真家。

2011年から2年半に渡り、青年海外協力隊にてケニア野生生物公社で野生動物保護に携わりながら、ケニア各地で写真を撮影。 2014年より写真家として活動を始める。生物多様性や希少動物の保護をテーマに各地で写真展や講演会を行う。

2014年11月 リコーイメージングスクエア新宿(ペンタックスフォーラム)にて個展「ケニア・生命の大地」開催。

 

興味の対象はカメラから被写体へ

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小さい頃から生き物が好きで研究者を目指していました。写真にはまったのは大院生の時。星野道夫さんの写真に出合い、自分も原初の自然への憧れを抱くようになりました。大学卒業後、青年海外協力隊でケニアへ行き、野生動物保護の傍ら記録写真係として約2年半、現地の写真を撮り続けました。

不思議なことに、ケニアに行く前はカメラそのものや技術に興味があったのですが、向こうに行ってたくさんの写真を撮ってからは、カメラに対する興味がなくなってしまったんです。カメラではなく、レンズのその先にある被写体に興味を持つようになりました。生き生きとした野生動物や雄大な自然風景など、直球で被写体が主人公になっているものが心に強く響いたんです。作品を通じて、壮大なアフリカの生き物の生態系や生物多様性の豊かさを少しでも伝えられればいいなと思っています。

 

野生動物の写真は“運”がすべて

 

SHOT JAPANのギャラリー内では、ケニアの様々な野生動物を撮影した「WILDLIFE」というアルバムを掲載しています。

野生動物は近くに寄ってきてくれることがめったにないので、大半が超望遠レンズで撮ります。近くに来てくれて、広角レンズで風景と一緒に撮ることができるのは本当に稀です。

野生動物の写真は、ほとんどが運です。例えるなら、野球のバッターのように、飛んできたボールにバットを振る感じ。自分からセットアップできないので、その場所に行って待つ。どこからボールが飛んでくるかわからないので、突然やってくるボールに対してちゃんと打ち返せるかが技術力になります。

国立保護区内に生息する大型動物の航空調査を写真係として行ったことがありました。人間からのプレッシャーを逃れて急斜面の崖の上を歩くゾウの群れを、ヘリコプターのドアを取ってシートから身を乗り出して撮影しました。航空写真なんてめったにない機会なので非常に興奮しましたね。楽しすぎて、恐怖を感じる暇なんかありませんでした。

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ほかにも、発情期で猛り狂ったオスのアフリカゾウに車で移動中に追いかけられたり、大迫力のヌーの大群を間近で見たり、密猟によって命を奪われている希少なクロサイに出合ったり……。どれも、運良く遭遇した貴重なシーンを写真に収めることができました。

2年半の間に撮影した写真は数万枚にもおよびます。撮るたびに野生動物の力強さや生命力に心を打たれ、同時に、人間によって失われていく命に対して自分は何をすべきか、深く考えさせられました。

動物との出合いはすべてタイミングですから、まだまだ挑戦したい場所や動物がたくさんあります。今後は、中南米やアラスカにも行ってみたいですね。鳥類やアリクイなどそこにしかいない動物を撮りたいです。

 

人や街を写したドキュメンタリー写真に注目

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自分が野生動物の写真を撮っているせいか、他のフォトグラファーさんの写真でも演出しているものよりドキュメンタリー写真が好きです。

ひろ・あおきさんの「Street in Srilanka」は、建築物や看板などの雰囲気がケニアとすごく似ています。空気感が一緒なのでしょうか。行ったことはないけれど、懐かしい感じがしますね。

あとは、人が写っている写真はけっこう好きです。ケニアでも野生動物や風景のほかに、現地の子ども達の写真をよく撮っていました。人物の写真は、一歩踏み込まないとただの記念写真になってしまい、いい写真が撮れません。僕はもともと人見知りする性格なので、そこがちょっと弱点でもあります。だから、アラーキーのような人間力はすごく憧れますね。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ

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フォトグラファーインタビューVol.2 鶴田真実

独自の感性で一瞬を捉える

 鶴田真実さんは、デジタル世代の最先端をいくフォトグラファーです。SNSを使いこなして自らの作品を発信する一方で、カメラブログを執筆し、フォトスクールで指導を行う――。そんなマルチな才能溢れる鶴田さんに、新しい作品の生み出し方や、これからのカメラマンとしての在り方などを伺いました。

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Photographer:鶴田真実(つるた まこと)

中学生の時に某J事務所の1次を突破。関東を中心とした応募者1000名中の20名に残るも、面談まで行ってさらっと辞退。 2002年より週刊ゴングをメインに活動。2007年 事実上の倒産で突然の無職に 路頭をさまよいつつキヤノンビジネスサポートなどで一眼レフカメラの販売を担当。2010年 フリーのみに専念 WEBに強いカメラマンを強みに展開中

http://one-cut.net/

作品づくりに大切なのは、遊び心

カメラマンとしての最初のキャリアは、プロレス誌『週刊ゴング』の担当でした。ここで構図や迫力ある写真の撮り方など、基本を学びました。僕の場合、プロレスは誰もができるスポーツではないので、意図をもって表現します。例えば好きな選手の試合では、写真に対して僕もその選手になった気持ちで撮っています。相手に技をかけられた時の痛さや勝った時のうれしさ、負けた時の悔しさだったり……。一歩踏み込んで情を入れると、違うものが撮れるんですね。そういった感情表現が面白い写真を生み出すポイントになるのかなと思います。

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現在は、フォトグラファー、ライター、映像制作と多岐にわたって活動しています。写真の仕事としては、企業インタビューや会社の工場を撮影することが多いですね。

SHOT JAPANには、プロレス写真のほかに、仕事以外のジャンルとして休日のおさんぽ写真も載せています。作品をつくる際にいつも心にあるのは、遊び心を忘れないことです。クライアントがいる仕事の写真だと求められるものを撮るので、どうしても硬くなってしまうんです。だから、趣味の写真としては真逆のことをしたいなと。例えば、ちょっとふざけた構図や技法を使ったり。また、その時の僕のコンディションが写真になっていることが多いですね。気分が乗っている時は明るいふんわりした写真になりますし、重い気分の時は影のある雰囲気の写真を撮っています。

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「ゴーストポートレイト」という作品では、幽霊になった生徒が校内のあちこちに佇むという、ちょっと不思議な世界観を創り出しました。僕たちが普段、目で見ているものは現実的ですよね。だから、作品性のあるものをつくるにあたり、目に見えてないものを撮ろうと思った。そこで、ちょっといたずらをしてみたんです。カメラをいじった時に、2~3秒でシャッターを切っておいてすぐに被写体を動かすと、透き通った感じの残像が写るんですね。この手法は、たまたま夜景を撮りに出かけた際、シャッタースピードが遅くなった時に、「これは使える!」と気づいた。偶然の産物とひらめきから生まれた作品です。

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新しい時代の生き方を模索

フォトグラファーって、あるものをきちんと決定的な瞬間に撮る人と、自分のイメージを持っていてそれを創り出して撮る人と二極化されると思うんです。僕はもともとプロレス写真を撮っていたので、動いているものや何か起きていることは撮れます。だけど、ポートレイトや広告写真は、フォトグラファーやクライアントのイメージがあったうえで、絵作りして実際に構図などを指示していきます。僕はここが苦手なところでした。今後は、自分の思い描く絵を作って、決定的なタイミングを逃さずに撮るということをしていきたいです。目指すは「意図して撮ったんだけど、なんでこうなったの?」という不可思議な写真。見た時に、本当は自然な日常の風景の中にいるのに、明らかに現実的じゃない何かが入り込んでいる……。そんな写真を撮っていきたいと思っています。

 

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今の仕事の内容としては、完全に商業写真が多いですが、作家として自分の作品を持っておかないと、という気持ちはあります。何でも撮れるマルチフォトグラファーに近いので、他の人と何が違うのか明確に言えるようになりたいです。

今は、昔のやり方だけでは生きていけない時代です。僕の場合は、ネットを攻めているフォトグラファーがまだ少なかった時代にネット界隈をまわって仕事を受けて、フォトグラファー兼ライターになりました。あと5年ほどしたら、新しい仕事の広げ方というのが出てくると思います。今後は、企業や個人向けにカメラに関するテクニックなどをセミナーとして教えていくなども検討中で、日々、フォトグラファーとしてどう生きていきたいか模索しています。

 

フォトグラファーの“意図”を感じる作品に惹かれる

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好きなフォトグラファーはたくさんいますが、ぱっとは撮れないであろう瞬間を抑えていたり、その時じゃなければ撮れないものを創り出している人の作品は非常に惹かれます。

特に、カナダの写真家、グレゴリー・コルベールの「Ashes and Snow」という移動式の写真・映像・小説作品展は感銘を受けました。動物と人間が融合しているような、非常に芸術的な作品です。

SHOT JAPANのギャラリーでは、makoto shukawaさんの世界観が好きです。意図して写真を撮っているなと感じます。また、natsumeさんの独特の色彩感覚や篠原幹彦さんの幻想的な風景写真もいいですね。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ホミン

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