誰かの希望になれる写真を撮りたい

 鮮やかな空の写真をメインに撮影しているnatsumeさんは、32歳の若きフォトグラファーです。最近では、ナショナルジオグラフィックに2か月連続で掲載されるなど、その活躍が目覚ましいnatsumeさんに、写真を始めたきっかけや写真への熱い思いを伺いました。

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ポートレート撮影:花田和奈

 

Photographer:natsume

本名:小関 晃典(こせき あきのり) 1984年北海道生まれの東京育ち、日韓ハーフのフリーフォトグラファー。
早稲田大学在学時はスポーツ指導者を志すが、2008年の交通事故により断念。
リハビリ生活中に心奪われた空の美しさをきっかけに、風景写真を撮り始める。 独自の色彩感覚を活かした鮮やかな作風が特徴。 後遺症による足の痛みと闘いながら、アクティブかつポジティブに撮影を続けている。
仕事撮影ではウェディング、社長対談、スポーツなど幅広くこなす。ソニーイメージングプロサポート会員。

交通事故に遭い絶望の淵にいた僕を救ったのは、1冊の写真集だった


もともとは競技スポーツに関わる仕事を目指していました。大学もスポーツ科学部で、スポーツ指導者関係の就職先に就こうと思っていました。

人生が変わったのは、大学4年生の時。韓国に短期留学したいと思い、出発前の最終説明会を受けに行った日のことです。自転車で向かっている最中、タクシーに撥ねられちゃったんですね。足を大怪我して、もう走れないかもしれないと言われました。長い間、病院での入院生活が続きました。そこでは足を吊るされているので寝返りも打てないし、スモークガラスなので外はもちろん、空さえも見えない。相当ストレスが溜まりました。

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"DAY" SHOT JAPAN GALLERY

 しばらくして少し治ってきた頃に、無性に空の写真が見たくなって、リハビリがてら杖をつきながら書店に行きました。そこで出合ったのが、HABUさんの写真集です。空だけを撮っている写真家なんですが、けっこう衝撃でした。とにかく構図が自由なんですよね。よく見ると傾いていたり。「あ、この人、感覚で撮ってるな」って思いました。でも、どの空の写真もすごく雰囲気があって、素晴らしいんです。自分も撮りたい!と思いました。

HABUさんの写真は、教科書通りではない。その時、僕は完璧な人生を目指していたところがあって、それを交通事故で壊されてしまった。自暴自棄になっていたので、なおさら驚いたんですね。完璧でなくてもいいんだ。感性で人の心を動かせるんだ、と。そして、何の根拠があったかわかりませんが、僕にも撮れると思っちゃったんです(笑)。歩けるようになってきた頃、就職活動はせずに写真家になることを決めました。

 

自分の感覚を頼りに、道中で出合った偶然を撮る

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"WAY" SHOT JAPAN GALLERY

写真家になると言っても、それまで写真は全然撮っていなかったので、何の基礎も知識もありません。まずはガラケーの写メで空を撮り始めました。あとは、HABUさんが写真展のお手伝いをするアシスタントを募集していたので、それに応募しました。手伝っているうちにHABUさんとお会いする機会が多くなり、いつの間にか弟子に。ただ、HABUさんに技術を教わることは全然なくて、背中を見てついていく感じでした。とにかく空の写真を撮りまくって、自分の世界観を創り上げてきました。

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"SUNSET/SUNRISE" SHOT JAPAN GALLERY

写真を撮る時は、具体的にこういうものが撮りたいとイメージを持って撮りに行くスタイルではありません。撮影旅行へはどこか目的地を決めて、何を撮りに行くのかわからない状態で行き、道中で出合ったものを撮ります。

福島県のJR只見線・会津川口駅での写真もそのひとつです。吹雪の中、車掌さんが時計を見ている「Time to Go」という写真は、ナショナルジオグラフィックで”Best of February” に選出されました。これ、本当は朝日を撮ろうとしていた時のものなんです。でも、すごい吹雪で朝日を撮るのは到底無理で……。本当なら出かけないのですが、何かに出合えるかもしれないと思って、とりあえず行ってみました。駅でそろそろ出発する時間だと思って構えて待っていたら、車掌さんが出てきて、ぱっと時計を見た瞬間を反射で押した写真です。まさに勘と運ですね。

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"Natsume Works" natsumetic.com

最近の写真の中では、Facebookページのカバーにもしている、去年の6月に撮った海辺の写真が一番好きです。見渡す限りの空が鮮やかに染まる夕映えでした。女の子が走ってきた一瞬を後ろから撮りました。僕の場合、写真はフィーリングですね。ファインダーを見た時に、構図とかは一切考えない。色彩を重視して感覚で撮っています。

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"SUNSET/SUNRISE" SHOT JAPAN GALLERY

撮影旅行へ頻繁に行くことはなかなか難しいのですが、日課として自分のフェイスブックページに毎日空の写真を1日1枚上げています。これは、誰かの希望になってくれればという気持ちで続けているものです。僕がHABUさんの写真を見て前に進もうと思ったように、誰かが僕の写真を見てそう思ってくれたらいいなと思います。

 空はひとつにつながっている。世界中の空の写真を撮るのが夢


2年前から福島県を訪れて、現地の写真を撮っています。きっかけは、韓国の友達が福島にネガティブなイメージを持っていて、それを覆したいなと思って。一度、福島に行って撮ったことを話したら、「そんなところに行って大丈夫なの?」と言われてしまったんです。放射能のこととか真実はわからないけれど、自分が福島で見たものは事実として、こんな景色があるということを世界に発信していきたいです。

あとは、世界中の空の写真を撮りたいと思っています。4年前にHABUさんと一緒にオーストラリアへ撮影旅行に行った際、2週間だけ1人でいた時期がありました。その時に空を見て、「この空は日本とつながっているんだな」とふと気づいたんです。文化や宗教は違っても、人と人はひとつの空で繋がっているんだというメッセージを発信したいと思いました。いつか、世界中の空の写真を載せた写真集を出したい。そこにはもちろん、福島の空もたくさん入れて。これは長期的に考えている夢ですね。

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"DAY" SHOT JAPAN GALLERY

 誰にも真似できない、独特の撮り方に惹かれます

 

SHOT JAPANのギャラリー内では、宇賀地尚子さんの作品が気になりますね。おとぎ話のような世界観で、誰にも真似できない感じ。自分が同じ写真を撮って、全く同じレタッチをしても、このようにはなりません。

あとは、宮古島の写真を撮っているMiyakoIsland Photo Galleryさん。僕も宮古島に1ヶ月滞在したことがありますが、こんな景色見たことがありません。これ、よく見たら空撮なんですね。どうやって撮っているんだろうと気になりました。こういった新しいことをしている人の作品は好きですね。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ