天体写真のパイオニアが語る、写真との向き合い方

石川県在住の木村芳文さんは、霊峰・白山をライフワークとして撮るフォトグラファーです。自然風景と天体風景を組み合わせた独自の手法による作品は、圧倒的な世界観を醸し出しています。毎回、どのようにして素晴らしい作品を生み出しているのか、撮影に挑む姿勢やブレないマインドを伺いました。

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Photographer:木村芳文 1962年香川県生まれ

1988年 白山の撮影活動を開始。
2007年 写真家として独立。白山を生涯のテーマとして、高山帯の自然景観から山麓の生活・文化まで、写真表現を追求している。写真集は、『木村芳文写真集 白山自然態系』(北國新聞社)、他5冊。展覧会は、フジフォトサロン、石川県立歴史博物館、ミュゼふくおかカメラ館など。自然公園指導員

 

白山に魅了され、カメラを始めた

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 ”白山” SHOT JAPAN GALLERY

大学生の頃から山登りが趣味で、日本アルプスをほぼ踏破したり、沢登りをしに海外へ行ったりするなど、精力的に活動していました。石川県の白山に登ったのは、26歳の時。霊峰と言われている山ですが、実にいいところだなと、一気に魅了されました。自然とこの風景を残したいという思いが湧き上がって、写真を撮り始めるようになりました。28歳の頃です。

実はそれまで私は、どちらかというと写真を撮らない人だったんです。でも、白山に登って考えが一変しました。素晴らしい白山の景色を撮りたい。でも私に足りないものは写真を撮るカメラや技術だった。だから、撮りたいものを撮るためにはどう補っていけばいいかを考えました。

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 ”白山” SHOT JAPAN GALLERY

今、私が撮っている写真とはほとんど関係がないのですが、写真を撮り始めた当初は、丹地保堯さんという風景写真を撮る写真家に感化されました。この方が撮った木の写真は、とても惹かれるものがある。写真集をよく見て、どういうつもりでこれを撮ったのかなと考えて勉強しました。やはり写真は最終的にその人のマインドが出てくるものだと思いますね。

 

強い信念とイメージを持って、理想の写真を追求する

 

大自然の風景写真と天体写真を組み合わせた写真は、私が独自に生み出したものであり、パイオニアであると自負しています。写真家として始めた当初から、自然と天体が融合した写真を撮りたいという欲求がありました。やり始めた時から目標となる写真がなかったので、まさに0からのスタートでしたね。でも、実際に撮ってみたらなかなかうまくいかない。では、どうしたらいいかということで、色々研究をしました。

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 ”天と地と白山” SHOT JAPAN GALLERY

毎回、撮影は非常に複雑でシビアです。最近は望遠系のレンズで撮ることが多くなりましたが、地上風景に対して天体がどの位置に出てくるか、場所にしても数メートルの範囲で移動したり、分単位、秒単位で撮ったりしないといけません。そのため、自宅にいる時にすでに写真の完成イメージを固めます。それを撮るために、撮れる期間が1年間のうちに何回あるか、撮影可能な時間は何時何分か、場所はどこかと、完全に決める。問題はその時に気象条件が許すかと、自身がそこに行けるかということですが、綿密な年間計画を立てて、チャンスがあればきちっとそれを遂行します。撮影自体はそっけないものですが、常に「とにかくこれが撮りたいんだ」という強い信念とイメージを持って、そのために何をしなければいけないかを突き詰めています。

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 ”天と地と白山” SHOT JAPAN GALLERY

批判や意見も聞き入れ、糧にする

 

今ある機材でベストな写真を撮ること、あるいはそれを超えたところに挑戦していくこと、それが私が考える「プロ」の姿です。そういった意味で、新しい手法を常に追求していますが、一方で人の意見をとても参考にしています。最近はSNSに天体写真をあげると、非難ごうごうくるんですよ(笑)。でもそういった声は非常にありがたい。天体を突き詰めた方にとって、私の写真はどう見えるのか。本音や忌憚ない意見を言っていただき、それらを糧にします。写真は芸術表現ですから、どんな表現でも自由だと思います。でも、やはり私が求めるのは自然として妥当性があるもの。誰も文句のつけようがない美しい写真を目指したいのです。

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最近は、天体写真についてのセミナー講師をしています。3月26日、27日にも銀座のEIZOショールームで、星空と地上風景を別撮りしてワンショットに合成する「新星景写真」についてお話します。ぜひ、天体が趣味の方にも来てもらいたいですね。

”デジタルフォト・ワンストップセミナー「新星景写真」”

写真というのは、皆が同じように撮れるようになれば造詣も深くなるし、より的確な評価が得られて、非常にいい作品が世の中に生まれていくと思うんです。だから、技術は共有したほうがいいし、他の人にも私と同じように撮れるようになってほしい。そして、私を追随するようなフォトグラファーが現れてほしいですね。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ