王道は歩まない。常に自己流で表現する

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ジオラマ、パノラマ、深夜撮影を得意とし、長いキャリアを積まれてきた小野寺宏友さん。近年では、東京スカイツリーの定点観測写真で数々のメディアに取り上げられました。また、今年の2月20日発売の『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の特集グラビアで紹介され、その独特の写真が大きな話題を呼んでいます。今回は、前編・後編と2回にわたり、小野寺さんのキャリアや写真に対する思いを余すことなくお伝えします。

 

Photographer:小野寺宏友 1960年東京生まれ

”王道を歩まないフォトグラファー”

1982年 武蔵野美術短期大学商業デザイン科卒業
    同年模型雑誌で特撮デビュー
1986年 フリーとして独立
2003年 ライフワーク“シンヤノハイカイ”シリーズ撮影開始
2007年 東京スカイツリー(R)定点観測開始 TV出演多数
2012年 東京スカイツリー(R)公認写真集『東京634』(ソフトバンククリエイティブ)出版
2013年 ”野良桜”の概念を発見し撮影開始

 

ジオラマから映像制作まで、カメラに携わること30

 

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僕は基本的に王道を歩みません。例えば、アーティストや女性アイドルをきれいに撮るとか、高級時計をシズル感をだして撮るとか、そういうことはまったくできない。21歳から特撮の仕事を始めて、25歳で独立、今年で独立30周年になります。写真の学校なども行かず、全部自己流でやってきました。代表的な仕事としては、リカちゃん人形のパッケージ写真をかれこれ25年ほど、『こどもちゃれんじ』の表紙は20年ほど撮り続けていました。ジオラマ撮影をするのが得意なんですよね。

高校生の時に、映画『2001年宇宙の旅』を見て衝撃を受け、そこから映像の世界にのめりこみました。美大に入ってから8ミリフィルムで『2001年』を再現し、卒業後はCMの制作プロダクションに入りました。そこは結局3ヶ月で辞めてしまったのですが、その後、先輩が働いていた模型専門誌『ホビージャパン』から声がかかり、特撮の仕事を手伝うことになりました。その時の僕のオリジナルの撮り方がけっこう評判になったことから、フリーで本格的にジオラマ撮影を始めることになりました。徐々に仕事の依頼が増え、ジオラマ写真の撮影のほかにも、子ども向けビデオ教材の脚本、監督など映像の仕事も精力的に行っていましたが、仕事をやり過ぎて押しつぶされ、入院。その後何もできなくなってしまいました。

 

自分自身を投影した「シンヤノハイカイ」

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転機が訪れたのは2002年の暮れのこと。それまでは、仕事以外でプライベートではカメラは持たないと決めていました。でも、ある時、友人からロシア製のトイカメラの存在を知ります。すぐにLOMOカメラ※1を購入して撮ってみたら、これは楽しい!と。一気にのめり込みましたね。毎月1台、ロシアカメラを買っていたりしました。(笑)

※1ロモとは、ロシアの光学機器メーカー、レニングラード光学器械合同(Leningrad Optical Mechanical Amalgamation)の略称である。日本ではカメラ製品、とくにLC-Aを初めとする、いわゆるトイカメラを製造していたブランドとして知られている。Wikipediaより引用

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 ”シンヤノハイカイ” SHOT JAPAN GALLERY

そんなある日、銀座の中古カメラ屋で旧東ドイツのペンタコン6というカメラを買って、深夜撮影のスイッチが入りました。ある時は一晩で24枚撮りの中判フィルムを10本通したこともあります。ペンタコン6では、最初は身近な深夜の情景を撮っていました。でもある時、何気なく目にした、東京のど真ん中にぽつんとある”児童公園の滑り台”を撮影したんですね。それを機に、夜中に雪に埋もれている小さなユンボとか、ライトが消えているお台場の観覧車とかを撮るようになった。こういったものを撮って並べた時に、「なんで俺こんなの撮っちゃうのかな」と思ったんです。それで、いろいろ考えて出た答えは、「明日誰かの役に立つのを待っているモノ」をポートレートとして撮っていた、ということです。公園の遊具も雪に埋もれたユンボも、営業を終えた観覧車も、明日になれば誰か必要な人が来て、楽しんでくれるのを待っている。働くのを待っている。だから、写真1枚1枚に未来が生まれている。そう考えると、それぞれの表情が見えてくるようになりました。

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”シンヤノハイカイ” SHOT JAPAN GALLERY

この一連の写真につけたタイトルは「シンヤノハイカイ」。全部カタカナにした意味は、理由もわからずさまよい、そしてその目的にたどり着いた、その過程を表しています。それぞれの写真が自分自身の投影であり、明日のために深夜に息をひそめて存在していると思ったから。写真を撮っているうちに、何だかよくわからないけど自分自身を撮っていたんですね。

 

「野良桜」の魅力を全国に広めたい

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今回、『アサヒカメラ』2016年3月号の特集グラビアに、4人の写真家の1人として紹介されました。五島健司さん、深澤武さん、鈴木理策さんというそうそうたる方々の中で、僕の作品は「野良桜」と、明らかにテイストが違います。僕にとって上野公園とか有名な花見スポットの桜は、AKBのような集団アイドル。でも、街角に佇んでいる桜は地元のアイドルみたいな存在。それをポートレートとして撮ります。なるべく枝ぶりのきれいなもの、スタンドアローンで立っているもので、何でこんなところに咲いているんだろう?って思うような場所にいるものがいいですね。撮影を深夜に限定しているのは、基本的にヒトが苦手なのと、野良桜のポートレートなのでヒトが起きている空気感を写したくないのです。あとは、深夜の街は光が均一なので遠くのほうまでクリアに写るから。だから映画のセットみたいにも撮れるんです。

 

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”東京野良桜” SHOT JAPAN GALLERY

今は、「野良桜」を広めるべく、「東京野良桜」というTwitterのアカウントをつくって、ハッシュタグ野良桜で全国から野良桜写真の投稿を募集するという取り組みをしています。僕の写真を見てくれた人が、街中に佇む桜のことを見直して「野良桜」を身近に感じてくれたらいいなと。さらに「野良桜」を1つのジャンルとしてつくって、そこからサブカル的な部分を発展普及させていければいいなと思っています。

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 →後編へ続く

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ