作品を通して野生動物の今を伝える

 

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 2014年に写真展「ケニア・生命の大地」を開催した福井智一さん。東アフリカ・ケニアで撮影した野生動物の生き生きとした写真は大きな反響を呼びました。福井さんが写真を通して伝えたいことは何か。その熱い思いを伺いました。

 

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Photographer:福井智一(写真右側)

野生動物写真家。

2011年から2年半に渡り、青年海外協力隊にてケニア野生生物公社で野生動物保護に携わりながら、ケニア各地で写真を撮影。 2014年より写真家として活動を始める。生物多様性や希少動物の保護をテーマに各地で写真展や講演会を行う。

2014年11月 リコーイメージングスクエア新宿(ペンタックスフォーラム)にて個展「ケニア・生命の大地」開催。

 

興味の対象はカメラから被写体へ

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小さい頃から生き物が好きで研究者を目指していました。写真にはまったのは大院生の時。星野道夫さんの写真に出合い、自分も原初の自然への憧れを抱くようになりました。大学卒業後、青年海外協力隊でケニアへ行き、野生動物保護の傍ら記録写真係として約2年半、現地の写真を撮り続けました。

不思議なことに、ケニアに行く前はカメラそのものや技術に興味があったのですが、向こうに行ってたくさんの写真を撮ってからは、カメラに対する興味がなくなってしまったんです。カメラではなく、レンズのその先にある被写体に興味を持つようになりました。生き生きとした野生動物や雄大な自然風景など、直球で被写体が主人公になっているものが心に強く響いたんです。作品を通じて、壮大なアフリカの生き物の生態系や生物多様性の豊かさを少しでも伝えられればいいなと思っています。

 

野生動物の写真は“運”がすべて

 

SHOT JAPANのギャラリー内では、ケニアの様々な野生動物を撮影した「WILDLIFE」というアルバムを掲載しています。

野生動物は近くに寄ってきてくれることがめったにないので、大半が超望遠レンズで撮ります。近くに来てくれて、広角レンズで風景と一緒に撮ることができるのは本当に稀です。

野生動物の写真は、ほとんどが運です。例えるなら、野球のバッターのように、飛んできたボールにバットを振る感じ。自分からセットアップできないので、その場所に行って待つ。どこからボールが飛んでくるかわからないので、突然やってくるボールに対してちゃんと打ち返せるかが技術力になります。

国立保護区内に生息する大型動物の航空調査を写真係として行ったことがありました。人間からのプレッシャーを逃れて急斜面の崖の上を歩くゾウの群れを、ヘリコプターのドアを取ってシートから身を乗り出して撮影しました。航空写真なんてめったにない機会なので非常に興奮しましたね。楽しすぎて、恐怖を感じる暇なんかありませんでした。

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ほかにも、発情期で猛り狂ったオスのアフリカゾウに車で移動中に追いかけられたり、大迫力のヌーの大群を間近で見たり、密猟によって命を奪われている希少なクロサイに出合ったり……。どれも、運良く遭遇した貴重なシーンを写真に収めることができました。

2年半の間に撮影した写真は数万枚にもおよびます。撮るたびに野生動物の力強さや生命力に心を打たれ、同時に、人間によって失われていく命に対して自分は何をすべきか、深く考えさせられました。

動物との出合いはすべてタイミングですから、まだまだ挑戦したい場所や動物がたくさんあります。今後は、中南米やアラスカにも行ってみたいですね。鳥類やアリクイなどそこにしかいない動物を撮りたいです。

 

人や街を写したドキュメンタリー写真に注目

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自分が野生動物の写真を撮っているせいか、他のフォトグラファーさんの写真でも演出しているものよりドキュメンタリー写真が好きです。

ひろ・あおきさんの「Street in Srilanka」は、建築物や看板などの雰囲気がケニアとすごく似ています。空気感が一緒なのでしょうか。行ったことはないけれど、懐かしい感じがしますね。

あとは、人が写っている写真はけっこう好きです。ケニアでも野生動物や風景のほかに、現地の子ども達の写真をよく撮っていました。人物の写真は、一歩踏み込まないとただの記念写真になってしまい、いい写真が撮れません。僕はもともと人見知りする性格なので、そこがちょっと弱点でもあります。だから、アラーキーのような人間力はすごく憧れますね。

 

インタビュー SHOT JAPANスタッフ ユミ